2017年7月17日月曜日

高塩基度PACとは


前回は多木化学の分析の一環として、
高塩基度PACとは何か?(多木化学は買いか 化学品編)
という記事を書きましたが、純粋に高塩基度PACについて化学知識不要の説明を書きたいと思います。


1 凝集剤について

 水道水を作る方法は、数種類ありますが、現在日本において大多数を占めるのは急速ろ過という方法です。川や井戸の水(原水)に凝集剤を混ぜると、凝集剤を中心にゴミが回りに付着して大きな塊となり重さで沈み、きれいな上澄みを砂ろ過して塩素を加えたものが水道水となります。

その凝集剤には、アルミニウム系と鉄系がありますが、シェアの99%以上はアルミニウム系であり、その中で約9割を占めるのがポリ塩化アルミニウム(PAC)です。


2 高塩基度PACとは

通常のPACは、45%~55%程度の塩基度ですが、塩基度60%程度を高塩基度PAC、70%程度を超高塩基度PACといいます。
なお、超高塩基度PACは、多木化学が開発し、特許を取得しているため、他社で類似品を製造販売することはできないとされています。
ここ数年で、全国の水道事業体が多木化学から超高塩基度PACの提供を受け、自分のところの原水(地元の川の水)への効果を検討して、論文発表することが増えてきました。


3 高塩基度PACの長所

  (超)高塩基度PACは通常の塩基度の製品と比較し、次のような長所があります。
① 原水の適用pHの範囲が広いので、大雨後など急激な水質の変化に耐えられる
② 通常のPACよりも除濁(汚れを取る)効果に優ている
③ 残留アルミニウム低減効果が高い*
④ 配管内の析出物(ゴミ)ができにくい
⑤ 寒冷地、冬季での低水温や低アルカリ度水でも、凝集効果は著しく低下しない

*原水が汚いからといって、PACを大量に入れると、水道水の残留アルミニウム濃度が高くなってしまい良くない。

何よりもいい点は、通常のPAC注入設備と互換性があることです。
凝集剤の種類を変えたりすると、設備の変更や装置の材質・容量の見直しなどが必要となる場合がありますが、(超)高塩基度PACは通常のPACの注入設備をそのまま利用できるので、初期投資が掛からず、リスクが低いのが長所となっています。


4 高塩基度PACの短所

① 単価が高い*
② 全ての原水に対して、全ての面で、通常のPACよりも効果があるとはいえない
③ 超高塩基度PACは多木化学の工場が被災すると、供給停止のリスクがある。**

*単価は高いものの、通常のPACよりも、PACを含めた薬品の注入量を減らせるため、トータルでは割安になる場合もある。ただし、超高塩基度PACは多木化学が毎年強気の値上げ中とのこと。

**この場合は、通常のPACで代用して、注入率を変えれば対応できる。


 私は多木化学(4025)を購入しませんが、興味のでた方は一考してもいいかも知れません。
今、私が気になっているのは、水道コンサル会社です。特に水道法改正に伴い、水道台帳関連の銘柄は熱いと思っています。