2020年5月17日日曜日

VIX取引バックテスト結果 2020年版(第2回)


前回記事はこちら
※全編にわたり、正確性は保証できません。理解も記憶もあいまいです。

今回はVIXショート戦略の最適な取引ルールのシグナルを検討したいと思います。

結論から書くと、

●シグナル
コンスタント・マチュリティがVIX指数に比べて6%以上高くなったら米国VIブルETF(UVXY)売り。

となりました。

※「VIX」に「指数」という意味が含まれていますが、先物との違いを明確にするため、ここでは「VIX指数」と書きます。
※ここでの「コンスタント・マチュリティ(CM)」とは、VIX先物の第1限月と第2限月を合成したものをいいます。


バックテストの前提


・期間は2004年3月26日(VIX先物の取引開始日)から2020年4月17日までの約16年間
・使用するデータは第1回で作成したUVXYの理論値
・10,000ドルからスタート
・最終日にポジションがある場合は強制決済して損益確定する。
・常に資金の全額を投資する。(とりあえず)
・とりあえずレバレッジは1倍とする。含み損は考慮しない。
・シグナル確認は終値ベースとし、シグナルを確認した当日終値でUVXYを新規売建し、シグナルがなくなった当日終値で決済する。(実現困難ですが)
・税金や手数料等はとりあえず考えない。


適切なシグナルを確認


いわいる「先物プレミアム」が何%の時が最も利回りが良かったのか検証してみます。
まず、「VIX指数×n < VIX先物(第1限月)」で、nを1%ずつ変動させて損益を見てみます。青線が年間リターン(複利)で、緑線が1取引の最大損失率です。


基本的に損益がプラスになるのは、0.87≦n≦1.2 です。
n≦0.96 あたりから、1取引あたりの最大損失率が50%を超えるので0.96からグラフにしました。

1番パフォーマンスがいいのは、n=0.97 のときで、16年間で投資資金が約697倍になりました。ただし、1%違うだけで、1取引あたりの最大損失率が50%を超えるため、非常にリスクが高いです。

n≦0.80の場合、2008年のリーマンショックやコロナショック時に早くにポジションを持ってしまい、資金がマイナスになります。

ただし、n≦0.65あたりになると、2004年の初日にショートしてからほぼ決済しなくなり、取引回数が16年間で1~2回になるため、資産が約2~4倍になります。それ以上極端な数字では、ポジションを持たなくなります。

思ったほど、リスク・リターンがよくありません。最大で年利50%近くありますが、1取引あたりの最大損失率があまりにも高すぎて、精神的に耐え難いので、再現が難しい気がします。

次に「VIX指数×n < コンスタント・マチュリティ」で同様に見てみます。
青線が年間リターン(複利)で、緑線が1取引の最大損失率です。



劇的にリスク・リターンが改善しました。
先物(第1限月)に比べて、取引回数が3割ほど減り、保有日数が5割ほど増えました。リスク・リターンが改善したのは、値動きが落ち着いているので、無駄撃ちが減ったためと思われます。

損益額を見るとこうなります。



あくまで過去の実績ですが、一番成績がいいのはn=1.06 のときで、投資資金が16年間で約2,000倍になりました。5%プレミアムよりも、6~9%プレミアムでショートする方がいいと言えそうです。

ここからは、n=1.06 を前提とします。損益率の散布図を見てみます。


2007年あたりから、結構な回数マイナス20%以上の損切りを強いられています。
実際に取引していたら、心が折れて、取引を辞めていたことでしょう。

また、細かく見ていくと、もったいない取引があります。例えば、コロナショックの3月に1度も取引していません。
他にも、1取引あたりの最大損失率を記録した2013年2月は、VIX指数が14.17の日にショートを開始し、翌日の18.99になった日に決済して約25%損失を出しています。この25%は金額にして約7千万円です。とても耐えられません。

少し改良の必要があります。


損失を減らすには


あまりいじり過ぎると、オーバーフィッテイング(システムトレードでよくある過剰最適化)になりそうなので、シンプルで常識的な範囲で改良します。

まず、下値が限られているのに20以下で新規売建するのは、個人的に非常に抵抗感があるため、「コンスタント・マチュリティ(CM)が20以下では新規売建しない」という条件の追加が妥当かどうか見てみます。


縦軸が損益率で、横軸がポジションを建てた際のCMです。
大半の取引は、CM20以下で建てるため、20以下で新規売建をしないと、リターンが非常に悪くなります。また、15以下でも利益率がいい取引がたくさんあるため、下手に制限を加えないほうがよさそうです。

この散布図を見て気づきましたが、せっかく建値40以上の最高のポジションを持っていても、ほとんど利益が出せていません。ここは改善の余地があります。(次回検証)

1取引あたりの最大損失率を10%程度まで下げたいのですが、どうしたらいいか思い浮かびません。他に新規売建した日のコンタンゴ率で見てみましたが、相関は見られませんでした。


横軸はコンタンゴ率 縦軸は損益率

ただ耐えるしかないのか...
何かの指標との相関を見つけたら是非教えて下さい。
このままだと、たぶん心が折られます。


第3回へ続く

2 件のコメント:

  1. 私もGWからVIX取引のバックテストを行っています。
    同じような点を思案していたためコメントさせていただきます。
    (間違ったコメントで混乱させてしまうことがないことを祈りつつ・・・)

    私もCMがVIX指数とどれだけ乖離しているかに注目してシグナルを立てています。
    バックテストをする際に、CMにランダムな数値を足し引きしてオーバーフィッティングになっていないのか試したりしました。
    最大値、最小値、平均値、中央値などのばらつきを雰囲気で眺めたり。
    (科学的に意味のある実験かはわからないのですが)

    何かの指標との相関は探してみたのですが、なかなか見つかりませんね。
    少しでも勝率が上がると利益は大幅に上がるはずなのでまだまだ探してみます。

    >投資対象
    買い(VIXロング)は私も米国VIです。
    売りでは(SVXYは動きが悪く、GMOではスプレッドも大きいため見送り)NAS100をレバレッジ3-4倍くらいで試しています。

    新設されたVIX取引シグナルかっこいいですね。
    (・例外の部分が「マリュリティ」になっちゃってます)
    次の記事も楽しみにしております。

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  2. コメントありがとうございます。

    >私もGWからVIX取引のバックテストを行っています。
    同じ考えの人がいたとは・・・
    なかなか相関が見つからないですよね。

    売りで株価指数を使うのは私にはなかった発想です。
    少し気になるのは、今後も指数への寄与度が大きいIT大手(GAFAM)の株価が伸び続けるかどうかです。(今は割高で、いつか値崩れするのではないかという疑念)
    私は以前からS&P500指数への積立投資を計画していますが、そこが気になってしまい、未だに始められていません。

    >例外の部分が「マリュリティ」になっちゃってます
    ありがとうございます。直しました。

    エクセルをいじりながら、既に第5回まで記事を書きましたが、2017年以降はどうやっても停滞してしまうので、CMとVIX指数の乖離以外に目をつけないといけない気がします。
    新たな相関を見つけたら、是非教えて下さい。

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